2011年1月29日土曜日

講義録:感覚交換散歩演習 II

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日時:2011年1月29日(土)13:00-18:00
場所:京島校舎に集合→周辺を散歩
参加者:学生6名+教員1名
内容:
講師が考案した感覚交換散歩という方法を通して街を歩くことで,風景の見方を開拓します.感覚交換散歩とは,他者が街を歩いた時の音声を聞きながら歩くことで,他人の着眼点を通して,街を追体験する方法です.他者の歩行プロセスを体験しながら,歩いている道に関する他者の思いや感覚を音声で共有することで, 他者の着眼点を通した空間体験を可能にします.着眼点の共有を支援し,受け取った着眼点を利用した環境の知覚を促進します.
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13:00に京島校舎に集合。
学生は、6名。

初めに、写真を撮りながら感じたことを語るという行為をイメージしてもらうために、学生に別の場所で記録した音声(同じ道に対する3人の語り)を聴いてもらった。
その後、語りながら歩くという行為に慣れてもらうために、まず約30分間、学生に各自好きなところを散策しながら、感じたことを語ってICレコーダに録音してもらった。

続いて、学生に地図を渡して、事前に講師が歩いたルートを歩き、感じたことや考えたことを語って録音してもらった。


今回、感覚交換散歩のツールが動くiPhoneおよびiPod touchが3つのみであったため、3人がツールを使用、残り3人はICレコーダーで記録してもらった。
ツールは録音機能だけでなく、写真撮影と位置情報記録ができ、音声と写真と位置情報を同期して記録することができる。
参考までに、ツール利用者の撮影写真の並びを通して、同じルートに対する観点の違いを感じてもらいたい。


歩くペースが違うため、6人がばらばらと戻って来た。
お昼ご飯を食べていなかった学生がいたため、近くで焼鳥やたこ焼きを買ってきて、皆で小休憩。

追体験は講師も参加して、合計7人だったので、2人ー2人ー3人のペアをつくった。
特に交換したい相手がいる場合は申し出てもらって1ペアができ、誰でもいいという人の間でグーパーをしてもう2つのペア分けを行った。

つくったペアの間で自分の語りを記録したiPhone/iPod touchまたはICレコーダーを交換した。
続いて、交換した相手の音声を聴きながら、同じルートを歩いた。
ツールを使用した場合は、音声再生に合わせて写真が表示される。また、地図を表示して現在位置と相手がどの位置で語っているかを観ることができる。

続いて、ペアをつくりなおして、同じルートに対してまた別の人の観点を通して歩いた。
こうして自分と交換した相手2人の3種類の観点を通して同じ道を歩いたことになる。
最後に参加者全員で簡単な振り返りを行い、以下のような感想を聴くことができた。

「普段、視線は一定であまり上を観ないけど、相手の音声に合わせて二階とかを観た。」
「相手が好きなトタン壁の色、聴いていくにつれて好みのポイントがわかってきて、新しく出て来た壁に対して、きっとこれは好き/嫌いとか予想して楽しめた。」
「家が傾いているとか、音声聴かないと気付かなかった。」

私の感想としては、野菜をモチーフにした椅子がある公園で、全ての椅子の座り心地を確かめるとか、別の公園で遊具に乗ってみるとか、自分ではやらなかった行動を通して、その場所を体験することができた。

どちらが優れているとかではなくて、その人が無意識でもこだわって観ている対象やテーマというものがある。
同じ街、同じ道を異なった観点を持つ人でその魅力を発掘して共有していくこと。
さまざまな観点からその地域が浮かび上がってくる。
今後も継続して、他の参加者とともに墨田を歩くことで、観光ガイドには載っていない、個人的な魅力を追体験するきっかけにしていきたい。
(報告:栗林賢)

2011年1月15日土曜日

講義録:感覚交換散歩演習Ⅰ(栗林)

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日時:2011年1月15日(土)13:00-17:00
場所:京島校舎に集合→周辺を散歩
参加者:学生3名+教員1名
内容:
講師が開発した感覚交換支援ツール"語りカメラ”を通して散歩を行うことで、風景の感じ方を開拓します。語りカメラとは,撮影対象について物語る声を記録するシステムです。“語る”という行為を支援することで、撮影行為の元となった衝動や感覚の認知・表現・伝達を促進します。語る内容を探し出す必要性があることで、撮影対象への能動的な関わりを生み、発見や気づきを促進します。語りカメラで記録した写真と音声を撮影場所で再生することで、写真には表れない撮影者の感覚・感情の追体験を行います。
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13:00に京島校舎に集合。
参加者は、友廣くん(墨田在住)と、小野田さんと、中島くんと栗林の4名。
初めに、写真を撮りながら感じたことを語るという行為をイメージしてもらうために、語りカメラで記録された音声と写真のサンプルを鑑賞した。
その後、約1時間、各自好きなところを散策し、気になった場所やものごとを発見してもらった。
続いて、4人まとまって歩きながら、それぞれがおすすめの場所に行き、語りカメラで収録していった。
もともと自分が気になった場所だけでなく、別の人が紹介した場所に対して何か語りたいことがあった場合も収録した。

以下に、4人で歩いた体験の記録と語りカメラで記録した写真と語りをひとつずつ紹介します。

●友廣



●小野田



●中島



●栗林



今回は、語りカメラを使って、個人的に惹かれた場所を撮影者の思いとともに記録した。
語りプレーヤを使用することで、記録したデータを、位置情報や移動履歴と関連して再生することができるのだが、今回はその機会を設けることができなかった。
今回記録した写真と音声を別の人が追体験する機会を別に設けたい。

同じ街、同じ道を異なった観点を持つ人でその魅力を発掘して共有していくことで、さまざまな観点からその街が浮かび上がってくる。
今後も継続して、語りカメラで街を記録してことで、個人的で多様な観点と撮影者の思いを通して、街を体験するきっかけにしていきたい。
(報告:栗林賢)

2011年1月9日日曜日

ペンキを塗ります

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日時:2011年1月9日(日)、10日(祝)※実際は9日のみ開講。
集合:13:00
場所:墨東大学京島校舎
担当:加藤文俊、木村健世、岡部大介
参加者:4名(教員3+学生1)
内容:
ドタバタしながらスタートした墨東大学ですが、京島校舎の居心地はいまひとつです。暖かくなる前に、もう少し可愛く、魅力的な場所にしようというプロジェクト(緊急開講)です。年末、木村・岡部・加藤の3人で集まって、秋ぐらいまでは墨東大学を存続させようと誓い、その勢いで計画された講座(実習)です。まずは、壁から手をつけたいと考えています…。
※汚れてもいい服装+防寒対策が必須となるでしょう。寒くて疲れたら、奥に上がって豚汁でも食べますか。
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 bocktの加藤先生と木村さんの発案で、京島校舎に入って左側の壁一面を「黒板」にすることに。黒板塗料によってどの程度「黒板」になるのか半信半疑なまま京島校舎に向かうと、既にbocktメンバーと斎藤卓也さんがマスキングテープを貼るなり準備を始めていた。いつもいる「なかぢ」は、卒論の概要提出〆切が近いのでお休み。年明け間もない京島校舎は、少々肌寒いけれどものんびりした空気。今年初めてのペンキ塗り。



 加藤先生と木村さんが準備してくれたChalkboard用のペンキをはじめて目にする。アメリカからの輸入品。特に事前にブリーフィングや打合せをすることなく、トレイにペンキを流しこみ、各自淡々と(ペイント)ローラーを手にする。壁に塗る場合は、まずは「W」を描くように塗り、それをのばしていくと奇麗に塗れるとのこと(という情報を、私はローラーの入っている袋に記載された情報を見てはじめて知った)。墨東大学学部長の加藤先生によって、白壁にペンキのローラーがいれられる。大きく「W」が描かれ、これによって壁一面を黒板塗料で埋める決心がつく(そのために集まったのだけれども)。



 想像以上に、塗料=Chalkboardの塗り心地が良い。また、木村さんが準備してくれたペンキ用のローラーの存在がかなり大きい。次第に大胆に塗り進めることができるようになり、大人4人の作業で数十分かけて全体を塗る。その上で、細部を塗っていく。塗っている間は気づかないムラも、ペンキが乾いてくると目につくようになる。よって、まずは1回塗りこんだ上で乾かし、2度塗りすることに決定。上部と細部をなんとか仕上げ、また釘などを打ち付けた後の穴もペンキで埋めていき、1度目の作業を完了させる。ペンキ素人4人のDIYだけに、一面黒板塗料が塗られた壁を見続け、自画自賛を繰り返す。かなりの満足感が得られる授業である。この作業をひとりでやろうという気持ちには到底ならないけれども。

 約1時間乾かすことにして、その間珈琲ブレイクをとることに。京島で有名な「ペロケ」に行ったことのなかった私のリクエストで、みなで移動。ラーメンと珈琲を食しながら、ペンキのこと、これからの墨東大学の運営やまとめ作業のこと、共通の知り合いの他愛のない話などをして過ごす。京島校舎に戻り、ペンキが乾いていることを確認する。2つ目のペンキの缶を開けて、塗りムラを確認しながら淡々と作業する。2度塗りの際は、もはや4人に会話はほとんどない。さらに淡々と、「自然と」できた役割分担に従って作業を進めていく。覚えている会話と言えば、京島校舎を閉校する時に、また「白」のペンキで塗るんだよねということくらい。



 さて、2度塗りされた京島校舎の壁は、重厚感ある存在に。さっそくチョークで文字を書きたいが、もちろん乾いていないので今日はできない。壁が黒板になると、床にも何かしらの「仕掛け」をしたくなってくる。床も黒板にしてもいいかもしれないし、すのこをおいてもいいかもしれない。しばらく、ただの黒壁と化した京島校舎の壁を写真におさめて過ごす。勿論、ただの黒い絵が撮れるだけだが。完成の状態=ゴールのあるDIYは想像以上にすがすがしい気持ちにさせてくれる。15分程度壁を眺めた後、思い出したように片付けをし、次の墨大の授業でどのように黒板を使うか妄想しながら、京島校舎のシャッターを閉めた。