2010年10月22日金曜日

講義録:キャンプ論(加藤)

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2010年10月22日(金)18:30〜20:00
講義名(担当者):キャンプ論(加藤)
集合場所:東向島珈琲店
内容(講義概要より):「墨東大学」は、私たちの日常生活や人間関係を“大学(大学生活)”に見立てて、地域を考える試みである。墨大生たちの活動の舞台となる「キャンパス」とは何かについて考えるとき、「カンプス(広場・平らな場所)」というおなじ語源から派生した「キャンプ」について知ることも重要だ。「キャンプ」は、(1) 人びとが集いのびのびと語り合う、(2) 現地で調達する、(3) かぎられた滞在時間を満喫する、といった側面が際立つ〈学びの場〉である。「キャンプ論」では、講義とディスカッションをつうじて、墨大生であることの意識を高め、移動型・仮設型学習のあり方について考えてみたい。
参加人数:4人(在学生男子1名, 新入生女子1名, 教員2名)
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さて、いよいよ墨東大学も本格的にスタートです。この日は、東向島珈琲店で「キャンプ論」が開講されました。出席者は、講義担当者をふくめて4名。とてもちいさな集まりでした。


講義題目は「キャンプ論」でしたが、「墨東大学」というプロジェクトの基本的な考え方について考えるという内容です。実際には、「こういう主旨だ」という断定的な表現ではなく、「こんな感じで考えているんだけど…」というように、アイデアを共有し、その場で整理していくようなやり方です。以下、実際に話した順番どおりではありませんが、「墨東大学」について整理してみました。

1. 問題解決から関係変革へ
まず、地域コミュニティとの連携方法を再考してみようという想い。たとえば、大学と地域が委託調査・共同研究という形式で結ばれるケースは少なくありません。地域コミュニティは、大学に対してある種の専門性や技術等に期待し、そのためのコストを研究費という形で補助します。これは“needs-driven”とも呼ぶべき方向性で、地域コミュニティを過度に“クライアント化”する可能性があります。
いっぽう、ここ5年ほどの「キャンプ」の試みからも、より互恵的な関係性にもとづく実践も可能だという想いは強くなっています。地域「資産(assets)」の価値を高めようと試みるとき、大学と地域コミュニティの双方が、自律的・互恵的に結びつくことができるはずです。たとえば教員・スタッフの職能が墨東大学で提供される際には、ボランタリーな「プロボノ」的な位置づけで実現されることが望ましいでしょう(実際、すでにそうなっていますが)。つまり、〈大学〉というメタファーで構成される「墨東大学」における主たる活動はコミュニケーションなのです。それは、地域における社会関係のあり方を再認識する機会だと言えるかもしれません。

2. 学ぶ欲求から教える機会へ
地域の「強み」を可視化する試みとして、〈大学〉という仕組みを考えるとき、まず重要なのは学生(受講生)の確保です。オープンな講座や実習を計画しても、肝心の受講生が集まらなければ意味がないからです。まずは、魅力ある内容で、人びとを迎え入れることが求められます。
じつは、重要なのは、人びとの学ぶ欲求を満たすことばかりではないでしょう。地域に暮らす人びとの属性や能力を熟知し、人びとの教えたい欲求の充足にも目を向ける必要があることに気づきます。ぼくたちのコミュニケーション欲求を満たし、あらたな紐帯を生み出す場として「墨東大学」という場づくりを考えるのであれば、まさにさまざまな問題意識を共有することこそが活動の中心となります。講師から話を聞くだけではなく、(どのようなトピックであっても)じぶんが「語り手」になることに価値が見出されるでしょう。突然、「講師」や「教授」という役割を期待されることに戸惑いはあるかもしれませんが、このプロジェクトをつうじて考える〈大学〉は、共に学ぶ環境として考えてみたいのです。

3. 不特定多数から特定少数へ
地域に根ざし、〈教える=教わる〉という関係性が流動的に変化するような場合には、臨機応変に学習内容・日程の調整が実現することが望ましいと考えられます。墨東大学では、教える側と教わる側がお互いに時間を供出し、コミュニケーションの機会をつくります。講義の内容についても、可能な範囲で即興的な調整や改訂がおこなわれる仕組みが実現できればと思います。墨東大学の講義はアドホックに構成され、受講者のリストさえもが逐次書き換えられているので、〈その時・その場〉のリクエストや関心事(リアルタイム性の高いトピック)に応じて、講義内容やすすめかたが決まるのが自然だと言えるかもしれません。そう、墨東大学の「カリキュラム」のコンセプトは“流し”のようなものです。「あ、きょうは集まり悪いなぁ」「じゃあ、きょうはあの話をお願いします…」

というわけで、お茶を飲みながら、少人数で語るという、理想的な「教室」となりました。リラックスした雰囲気のなかでマジメに話ができるという、贅沢な場だったと思います。この日に話した内容については、もう少し整理してみるつもりです。皆さん、ありがとうございました。

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